訪問看護の仕事が向いている人の特徴!メリット・デメリットと向き不向きを考えてみよう
急速な高齢化によって、慢性疾患を抱えて生きる方が増加傾向にあります。
生活習慣病のような慢性疾患の治療は、患者さんが自分自身で管理しなければいけません。
そのため、「在宅医療」として看護師や医師が管理をしていきます。
また、2015年からは法改正により、地域包括ケアシステムが推進されています。
2025年をくぎりに、要介護状態の人も住み慣れた地域や家庭で、最期まで自分らしく暮らせるように、医療や介護の支援を行っていくというシステムです。
看護師や訪問看護ステーションの存在は医療と介護の両方に重要なため、ますます需要が高まっていくでしょう。
今回は、訪問看護の仕事が向いている看護師、向いてない看護師や、メリット、求人の選び方など解説していきます。
訪問看護の仕事内容
訪問看護は、ご自宅や老人ホームなどを訪問じ、療養生活を送っている人やそのご家族へのサポートをするサービスです。
具体的な仕事内容は、以下の通りです。
・病状のチェック
・清潔ケア
・日常生活のサポート
・簡単な処置
・カテーテルの管理や人工呼吸器管理などの医療処置
・リハビリテーション
・認知症ケア
・終末期ケア
・本人や家族への療養・介護指導
訪問看護の仕事の役割とは?
訪問看護では限られた時間の中で症状や身体状況を確認したり、医師の指示のもと適切に対処したりします。
ケアマネージャーと連携しながら、医療と介護の両方の視点で安心して生活ができるようサポートしていくことが、重要な役割です。
訪問看護の仕事が向いている人
的確な判断ができる
訪問看護は患者さんのもとにお伺いするため、病院勤務と違って同僚の看護師や医師の手を借りることができず、アセスメントや治療の決定・実行、急変時の対処は基本的に1人で行わなければなりません。
適切な判断力のほか、利用者の状態に応じて適切な看護ケアをするための知識や技術、医師や同僚看護師、ケアマネージャーなどにスムーズに相談する力が必要です。
チーム看護の病院のように独断では判断できない環境を抜け出し、自分で判断できる責任のある仕事がしたい看護師にはぴったりです。
コミュニケーションが得意
患者さんの生活は、訪問看護師以外にもさまざまな人のサポートを受けて成り立っています。
在宅の生活ではさまざまな専門職の人がその人らしいサービスを提供しているため、訪問看護師も多職種と関わりが必要になり、コミュニケーション能力も求められます。
また、訪問看護の現場に医師が同席する機会はめったになく、顔の知らない医師とのコミュニケーションが必要になります。
患者さんは在宅で過ごせるくらいに病状が落ち着いているため、医師の指示についても具体性がなく、おおざっぱな指示から具体的な処置を自分なりに考えなければならないこともあります。
また、処置にあたっては医師に電話で患者さんの状態を説明する力も必要です。
医師のタイプに合わせ、コミュニケーション方法や伝え方も変えながら対応しましょう。
エビデンス重視の看護が嫌い
看護師には問題を明確にした上で、その問題を解決できる人が多くとも、患者さんのそのときの気持ちに合わせて行う看護ができる人はあまりいません。
患者さんが主体となる訪問看護では、相手の思いを汲み取りながら生活の質を向上する看護を考える必要があります。
医師の指示を受けることで、自分のやりたい看護ができないという経験がある看護師には、訪問看護が向いているでしょう。
看護師のブランクがある
結婚や出産によって看護師を辞め、家庭が落ち着いてまた働きたいという看護師のきっかけにもおすすめしたいです。
施設勤務では介護の要素が強いため看護師としては物足りず、しかし病院は若いスタッフや新しい医療器具、電子カルテのように慣れないことも多いため体力的にもきついでしょう。
訪問看護は、ブランクを経て働きはじめた人が多く、似た経験を持つ人はなにかと頼りになります。
訪問看護の仕事で活かせる経験
もちろん看護師としての経験も必要ですが、訪問看護は介護の分野とも関わりが強いことが特徴です。
また、訪問看護ステーションの経営にかかわる業務が求められることもあります。
さまざまな知識や経験を活躍できるため、詳しくご紹介しましょう。
病院での看護師経験
基本的な看護知識や技術は、病院看護も訪問看護も同じです。
しかしながら、病院は診療科によって仕事内容やが違い、求められる知識や技術もある程度限定されています。
訪問看護はそうもいかず、患者さんの年齢も疾患もさまざまです。
そのため、浅くとも広く経験している看護師さんのほうが、訪問看護で活躍できます。
中には、ICU、アセスメントの知識や技術を勉強したいと考える看護師もいます。
ケアマネージャー、介護福祉士、ホームヘルパーなどの経験
介護とも結びつきがある訪問看護では、ケアマネジャーの資格を持っている人が多く活躍しています。
保険制度や介護の専門知識、サービスの種類といった知識はかなり役立つでしょう。
訪問看護師として働いていると、介護福祉士やヘルパーとの連携も必要です。
患者さんのもとを訪問しない日には、ヘルパーに薬の管理や状態観察をお願いし、情報を頂くこともあるためです。
介護の分野で働いていた経験がある人は、ストレングス・モデルを理解している人が多く、訪問看護に転職してからも活躍できるでしょう。
一般企業の営業職や事務職
中小規模の訪問看護ステーションでは、看護師自身があいさつ回りやプロモーション活動を行う場合もあります。
営業経験者なら、中心人物となって活動できるでしょう。
また、事務員がいない訪問看護ステーションもありますので、エクセルでの報酬計算や、ワードでの文書作成もしなければいけません。
訪問看護で働くメリット
一人の患者さんとじっくり向き合える
病院では複数患者さんを受け持ち、ナースコールや検査での呼び出し、手術患者の対応も随時行うため自分が思うように看護できないことも多いでしょう。
しかし、訪問看護では決められた時間・場所で対応します。
1対1でじっくり話し合う時間やご家族と話す時間も作ることができ、よりよい看護を目指せます。
退院も存在せず、一人の人と長い期間関われるのも魅力です、
長く関わる中で信頼関係を築き、生活の向上をともに目指すことも可能ですし、責任がある分やりがいも感じられます。
病院で思うような看護ができないと感じる看護師にぴったりの職場です。
夜勤がない
訪問看護には、夜勤はありません。
しかし、基本的にすべての業務を1人で行い、責任も大きいため夜勤手当のある病棟看護師と同様の収入につなげることができます。
また、訪問看護師は「オンコール」という電話当番も行います。
時間外のご相談や、緊急性が高くすぐにでも処置を行わなくてはいけない場合に電話で対応し、夜や朝であっても訪問しなければいけないため、給料水準が高いのです。
しかし、電話当番でも、必ず事務所にいなければいけないわけではありません。
基本的に在宅で生活が可能なレベルに症状が落ち着いている患者さんが多いことから、オンコールの日に電話がまったく鳴らないこともめずらしくありません。
日勤や夜勤を繰り返す不規則な生活で心身を壊したくない、それでもしっかりと収入につなげたいという看護師におすすめできるでしょう。
人間関係がわずらわしくない
看護師は、人間関係について悩まされることが少なくありません。
師長や主任といった管理職クラスの人、先輩看護師やほかのメディカルスタッフ、患者さんや家族などたくさんの人とかかわりますし、病院という閉鎖的な空間ではトラブルも起きやすいものです。
看護師という仕事柄、どの職場でも患者さんや医師、同僚との関わりはありますが、訪問看護におけるもっとも魅力的なポイントは「一人の時間が多い」ということでしょう。
朝に出発したあと、すべての訪問が終わるまで、移動時間は基本的に一人です。
移動中は周りに気を配ることもなく、訪問先で失敗したとしても外に出て一人になれば、気持ちを切り替えやすくなるでしょう。
訪問看護の仕事が向いていない人の特徴
看護師経験が浅い
訪問看護師では、基本的に10年以上の看護師経験がある方が多く働いています。
訪問看護は基本的にさまざまな業務を1人で行わなければならず、新人であっても病棟看護師のように充実した研修プログラムやサポート体制が用意されていません。
そのため病院などでの勤務を3年ほど続け、基礎的な知識やスキルを習得したのち転職することをおすすめします。
大規模な訪問看護ステーションでは、新人看護師の教育プログラムを組まれているところもあるため、看護師経験が少ない方は意識的に探してみてください。
指示されないと動けない
もちろん医師からの指示書はありますが、病院のような指示とは違い大まかな指示が多く、看護師本人の判断が非常に重要です。
患者さんの様子を見て判断した内容が違っていれば、自分で責任をとらなければいけません。
1日の訪問件数が多い場合には先輩や上司に相談する機会もあまりないため、誰かに相談しながらでないと動けない看護師には、あまり向いていないといえるでしょう。
最先端の医療技術を磨きたい
大きな病院では最新の治療方法や薬、技術にまつわる勉強会の機会も多く、最先端の医療が身近に感じられます。
しかし訪問看護では、研修の機会も比較的少なく、医療機器メーカーや薬剤メーカーによる勉強会も頻繁でないため新しい知識を取り入れるのが難しい傾向にあります。
もちろん、転職先の訪問看護ステーションが研修や実習、教育の充実を重視しているのであれば問題ありません。
看護師の仕事しかしたくない
訪問看護ステーションでは事務員がいないことも多く、少数精鋭のスタッフで回している場合がほとんどです。
そのため、訪問看護の合間に事務の仕事もしなければなりません。
病院では事務員が対応してくれる、カルテの整理、介護報酬や診療報酬等の計算、備品の管理と準備、書類の郵送手配というような業務も看護師の仕事になります。
「看護師の領域のことしかできない」という看護師は、病院で働き続けることが懸命です。
病院での患者と看護師との関係が抜けきらない
病院では患者さんといえば「お迎えするお客さん」という感覚に近いですが、訪問看護では「主役」です。
病院では看護師の方が立場が上という感覚もあるかもしれませんが、訪問看護では自宅にやってくる看護師の方がお客さんに近いと言えるでしょう。
常に「訪問させていただく」と考えていなければ、クレームにもなりかねません。
訪問看護では「時間を守らない」「断りなく寝床に入ってくる」といった、一般マナーにまつわるクレームが多いです。
クレームは、訪問看護ステーションの経営にも悪い影響を与えてしまいます。
訪問時のマナーは、きちんと学べば必ず身に着きます。
しかし向上心がなく、マナーの大切さになかなか気付かない人は訪問看護に向いていないかもしれません。
訪問看護を経験したあとのキャリアは?
訪問看護のキャリアアッププラン
特定の分野においての知識や能力を活かす、認定看護師・専門看護師の資格は価値があるでしょう。
認定看護師には「訪問看護」、専門看護師には「在宅看護」が関係ありますが、それ以外の分野にも使える知識が身につきます。
資格を保有する看護師が在籍した訪問看護ステーションでは、利用者からの信頼も獲得しやすく、訪問看護ステーションの差別化にもなります。
さらに助産師や社会福祉士、ケアマネジャーといった資格取得を目指したり、経営者として訪問看護ステーションを立ち上げたりもできるでしょう。
管理者や経営者になることで、自分が思い描く看護体制やサービスの提供もできるようになります。
他の仕事に訪問看護の経験は活かせる?
訪問看護から一般的な病院へ転職すれば、患者さんの退院を見据えて、普段の生活までサポートするようなケアができるようになるでしょう。
難病の患者さんにも、介護と医療の両方の面からアプローチするケアプランや適切なケアプランを提案できます。
仕事ではありませんが、もし身内が要介護になったときも、仕事で覚えた知識が役立つかもしれません。
訪問看護求人の選び方と注意点
雇用形態から探す
訪問看護の雇用形態には、正社員とパートやアルバイトの2パターンがあります。
大きな違いは「時間を選べるかどうか」です。
正社員なら基本的に、日勤のみの週休二日制になります。
パート・アルバイトは、結婚や出産で長く働けない、夜間は対応できない方におすすめです。
しかし仕事内容は、正社員とあまり変わらず、時給も高めに設定されています。
さらに「1日の対応は1件のみ」というように、件数で設定できる職場もあります。
会社の業態から探す
訪問看護ステーションは精神科や小児など、一部の診療科に特化している場合があります。
得意な分野ややりたい分野があるなら、特化したステーションを選ぶといいでしょう。
訪問看護ステーションが増えるごと、母体の種類も増えるためこれらも重要な判断基準となるでしょう。
病院などの大きい法人が運営する訪問看護ステーション、全国展開させているいわばチェーン店舗のような訪問看護ステーション、小規模の運営法人が運営している訪問看護ステーションなどがあります。
大きい法人や企業は経営状態が安定しており、教育制度やシステムも充実していますが、その分「組織」というスタンスが根付いています。
小規模の経営母体ではアットホームに働くことができ、要望や意見も反映しやすいものの経営が安定していなかったり、待遇がよくなかったりといったデメリットもあります。
自分自身が何を重視して働くか、よく考えて選ぶことが大事です。
待遇から探す
24時間対応の訪問看護ステーションでは、ほとんどの場合正社員の電話(オンコール)当番が必須です。
夜間や早朝も変わらずに、電話対応や訪問をしなければいけないこともあるでしょう。
その分、オンコール手当や緊急訪問手当によって給料は高い傾向にあります。
手当の計算方法は定額のこともあれば、当番や訪問の回数によって変わることもあります。
また、オンコールの頻度についても、採用面接時に確認しておきましょう。
スタッフが多ければ問題ありませんが、少ない職場では当番の回数が多くプライベートの時間が少なくなりかねません。
中には24時間対応でない職場、オンコールなしで正社員として雇用してもらえる職場もあります。
給料について検討するなら、まず働きたいエリアの相場を調べた上で、平均かそれ以上を得られる職場を絞って、それから条件を見比べていくといいでしょう。
特に給料が高い場合、訪問件数が多い、オンコールの当番頻度が高い、出動回数が多いなど忙しい傾向にあるため注意してください。
エリアから探す
ほとんどの場合、移動時間は15分程度と考え訪問エリアが決まっています。
人口が密集していればエリアの範囲が狭く、自転車や徒歩による移動が多いですが、人口過疎地では車で移動することになります。
そして車による移動の際に事故があれば、自己責任になります。
車の運転が不得意、または地理を覚えるのが苦手ならば、狭いエリアで働ける訪問看護ステーションを選びましょう。
1日の訪問件数から考える
無理なく訪問看護をするなら、1日4~5件が限度です。
訪問看護では報告書の作成や会議の出席、関係各所への連絡もしなければなりません。
それ以上の件数を1日で回るのは体力的にもきつく、事務的な仕事をする暇がなくなるため残業が増えやすくなります。
採用面接の際「現在働いている看護師さんは、だいたい1日に何件訪問していますか?」とあらかじめ確認しておきましょう。
まとめ
私が訪問看護をやったきっかけは、病院で働くのが嫌になってしまった、というシンプルな理由でした。
ですから、訪問看護に少しでも興味がある看護師は、積極的に飛び込んでほしいと思います。
もし合わなかったり、働きにくいなと感じたりしたら、転職したりステーションを変えたりすればいいんです。
看護師免許があるというだけで必要としてくれる職場は多いですし、大胆に行動してもいいのではないでしょうか?
今回の記事が、訪問看護に転職する看護師さんの参考になりますように。